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カテゴリー: 政治

名古屋城とエレベーター

 令和元年7月現在、名古屋城の天守閣は閉鎖している。第二次世界大戦の戦災で焼失し、鉄筋コンクリート造りで復元したものの、老朽化して耐震性に問題があるらしく、再建しようという計画が進んでいる。しかし、 エレベーターを作るかどうかで議論が起こっているらしい。

再現性

 ある人たちは、資料も残っているため、 焼失前の名古屋城が城郭として国宝第一号だったこともあり、 木造で史実に忠実に復元したいと考えているらしく、地元自治体などはその方針らしい。できるだけ昔の姿で再現したいという気持ち。これはわかる。そもそも古くからある建造物の価値は、昔の姿を現代に伝えてくれるところが大きいと思う。例えば犬山城にしても姫路城にしても、現存天守閣ということで再建された天守閣よりその価値が高く評価されていると思う。再建する場合でも、平城京跡、三大丸山遺跡など、できるだけ当時に近い姿で再建しようとしている。これは、当時の状況(外観だけでなく当時用いられていた工法など)をできるだけ再現して見てみたいという気持ちだと思う。私にもそんな気持ちがある。ただ、現存しているのではなく再建の場合、どこまで当時に近づけるかは耐震性やコストなども含め、様々な制約があり、なかなか完璧に当時のままにできるとは限らない。どこまで近づけるかは、「可能な限り」ということになる。

バリアフリー

 他方、エレベーターがないと階段では天守閣に登るのが困難な方(高年齢の方や足が不自由な方など)もいる。そのような方や支援されている方などから、エレベーターの設置要望が出ているらしい。 署名運動とか。できることならなるべく多くの人が行きたい場所に行ける方がいいと思う。特に、自治体が主導して計画を進める場合、バリアフリーにすることが大切なのは言うまでもないと思う。ただ、全ての人がどこにでも行けるようにすることは、”どこでもドア”でもなければ難しいと思う。例えば、富士山やエベレストの山頂に立てるのは限られた人たちだし、難路で有名な投入堂にも行くことが難しい人は多くいると思う。しかし、このような現存する難路と名古屋城が大きく違うのは、これまでの鉄筋コンクリート造りの名古屋城にはエレベーターが設置されていたので、これまでは行けた人たちが行けなくなることだと思う。これは、今までエレベーターで 天守閣にのぼれていた人たちからすれば排除されたと感じるだろう。

考えてみたこと

 これまでは行けた人たちにそのような思いをさせても昔の姿に近づける方がよいのだろうか。正直、わからない。何かよい解決策はないだろうか。

 まず思いついたのが、お城の内部空間の一部(地上階から最上階までの四角い空間)だけ区切って、「そこだけは現代の技術でバリアフリー化していますが、それ以外は忠実に再現しています」ということを明示し、バリアフリーの部分と忠実に再現した部分を明確に分ける方法だ。これだと再現性は下がるがバリアフリー化できるし、外観は昔の姿のままだ。しかも、この方法だと、エレベーターをガラス張りでシースルーにすれば、お城の木組みや屋根裏床下の空間までエレベーターから見られるようにできるかもしれない。そうなったら、エレベーターで上がって階段かエレベーターで降りてくる見学方法が一般的になるだろう、再現されたお城の木組みとか間近で見られたらとても興味深いと思う。

 もう一つ思いつくのが、お城の外に高いエレベーター棟を建てて天守閣に橋渡しするか、ロープウェーの駅を天守閣最上階の間近に鉄骨で作って天守閣に橋渡しする方法だ。これだと、天守閣自体はできる限り忠実に再現した上で、その外部に少しだけ接続させればいい。エレベーターをシースルーにすれば近くに見える天守閣は壮観だろうし、ロープウェーで天守閣に近づいて行くことを想像しただけで興奮する。橋渡しの部分をガラス張りにすれば欄干の外側の屋根なんかもすごく近くで見られるだろう。こんな風に既存の建物の外側に新しい建造物を造った例としては、国際子ども図書館のレンガ棟がある。ここに入った時は興奮した。しかし、名古屋城は、名古屋や愛知の方のシンボル的な建物だろう。そこに現代的なエレベーター棟やロープウェーの駅が接続された外観は、名古屋城を好きな方には耐えがたいかもしれない。でも、そういう、昔の姿と現代の姿が共存している姿も、とてもすばらしいと思う。特に、再現性とバリアフリーの折衷案で、格好いい名古屋城と格好いいエレベーター棟かロープウェーが共存していたら、それが夕陽に映えてたりしていたら、その美しさはたまらないと思う。もちろん日本中のどこを探してもそんなお城は見たことがない。エレベーター棟の参考例にはこんなのがあった。ロープウェーの参考例は見当たらない。

 このようにいくつかの方法は考えられると思うが、技術的な可能性は全くわからない。たぶんコストは高くなる。税金で作るのだとすれば税金を払うみんなでどこまで負担できるかもわからない。今から検討すると工期も余計にかかるだろう。

 だから、結局は、計画を主導する自治体や地元である名古屋市や愛知県の方々が、どのような方法がいいのか考えて決める問題だと思う。例えば、バリアフリー化案も含めて自治体などでしっかり話し合い、場合によっては市民あるいは県民の投票で決めるなら、どんな結論でもそれで進めるのがよいと思う。

 

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